前回の北欧・フランスは、いわば“優等生”だった。だが世界には、日本と似た悩みを抱えながら、違う道を選んだ国がある。今日はアメリカ、韓国、ドイツ、イギリスを駆け足で回り、海外編を総括する。日本に効く薬はどれなのかを考える。
アメリカ:国は冷たい、会社が動く
意外に思うかもしれないが、アメリカには国が定めた有給の育児休業制度が、長らくほとんどなかった。
国は最低限しか面倒を見ない。その代わり、優秀な人材を奪い合う企業のほうが、独自に手厚い育休や柔軟な働き方を用意してきた。
「国より会社が先に動く」市場主導型だ。良い会社に入れば手厚いが、そうでなければ何もない。格差は大きい。
韓国:法律は進んだ、規範が重い
韓国は近年、女性政策の法整備を急速に進めた。制度の上では日本より進んだ面もある。だが、出生率は世界最低水準まで落ち込んだ。なぜか。
受験競争や子育てコストの激しさ、そして「結婚したら女性が家庭に」という社会の空気が根強く残ったからだ。制度を変えても、人々の頭の中の常識が変わらなければ、結果は変わらない。韓国はその厳しい実例だ。
ドイツ:「カラスの母」からの転換
ドイツにはかつて「ラーベンムッター(カラスの母)」という言葉があった。子どもを預けて働く母親を非難する言葉だ。それほど「母は家にいるべき」という意識が強かった。
だがドイツは、保育の拡充や父親の育休促進に舵を切り、その空気を意図的に変えにいった。古い規範を、政策と時間で上書きできることを示した国だ。
イギリス:働き方を“柔らかく”する
イギリスが力を入れたのは、働く時間や場所を柔軟にする仕組みだ。
フルタイムか退職かの二択ではなく、その間にいくつもの選択肢を用意した。「働き方の解像度」を上げることで、家庭の事情があっても仕事を続けられるようにした。
海外編・総括:効く薬は3つある
4カ国+前回の北欧・フランスを並べると、日本に効きそうな薬が見えてくる。
第一に、父親を制度で育児に巻き込むこと。
第二に、子育ての金銭負担を社会で肩代わりすること。
第三に、働き方を柔軟にし、辞めずに済む道を増やすこと。
そして韓国が教えてくれた最大の教訓は、制度をいくら整えても、人々の“常識”が変わらなければ動かない。
この「常識」こそ、シリーズ中盤で正体を明かすラスボスである。
4カ国が教える“たった一つの真実”
国ごとにやり方は違う。
アメリカは会社主導、北欧は国主導、ドイツは規範の転換、イギリスは働き方の柔軟化。だが、すべてに共通する真実が一つある。
制度・思想・職場の空気、この三つがそろわないと変わらない、ということだ。
どれか一つだけ進めても、残りが足を引っ張る。韓国は制度を進めたが空気が変わらず失速した。アメリカは会社が進んでも国の支えが薄く格差が開いた。三つのバランスこそが、すべてを決める。
日本は“いいとこ取り”ができる
悲観する必要はない。後発であることには利点がある。先に走った国々の成功と失敗を、まとめて参考にできるからだ。
北欧の「父親の巻き込み」、フランスの「家族の多様性の許容」、イギリスの「柔軟な働き方」。これらを日本流に組み合わせればいい。
完全な真似は無理でも、効いた成分だけを抽出することはできる。
問題は、やり方が分からないことではない。やる気の問題だ。
次回は少し重いテーマに入る。「産む・産まない」を誰が決めるのか、という自己決定権の話だ。
賛否が激しく割れる領域でもある。だからこそ、私は片方に肩入れせず、両方の言い分を並べて考えたい。
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