女性の社会参画 第11回 なぜ男女差は生まれる?①体・家族・仕事。育児を分担する家族と男女が働く職場のイラスト

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〖女性の社会参画〗第11回 なぜ男女差は生まれる?①体・家族・仕事

── 性差を決める“土台”の3要素

前回、今の男女の役割や上下関係は、人類に共通する不変の掟ではないと見てきた。では、何がその差を広げ、固定してきたのか。今日と次回で、その“仕組み”を部品に分解する。まず今日は、土台となる3つの要素──体(生物)、家族の形、仕事のやり方──を見る。

先に全体像を言う。男女差を作る要因は、生まれつきの体の違いだけではない。誰が家事や育児を担うのか。誰が長時間働けるのか。どんな働き方が評価されるのか。こうした条件が重なって、収入や昇進、選べる生き方の差になる。体と環境のどちらが何割かを一律に決めることはできない。だが、変えられる条件は、私たちが思う以上に多い。

①体の違い:あるが、それだけでは説明できない

出産後の母親の休息を父親が支え、女性が職場で対等に企画を話し合うイラスト

男女の体には、平均的な筋力や生殖に関わる機能などの違いがある。妊娠・出産には身体的な負担があり、産後の回復や授乳への配慮も必要だ。ただし、すべての女性が妊娠・出産を経験するわけではなく、体調や能力には大きな個人差がある。「男性の平均」「女性の平均」は、目の前の一人の能力を決めるものではない。

問題は、この“体の違い”から、仕事や家庭の役割まで一足飛びに決めてしまうことだ。出産する人に休息が必要なことと、その人を管理職候補から外すことは別の話である。必要な時期の負担に対応することと、将来の可能性を狭めることを混同してはいけない。

例えば、授乳そのものを代われなくても、おむつ替え、寝かしつけ、食事の準備、保育園への連絡は分担できる。赤ちゃんの世話を「産んだ人の仕事」と丸ごとまとめた瞬間に、身体上の違いを超えた負担が上乗せされる。

職場でも同じだ。妊娠中や産後の健康への配慮と、本人が希望する仕事への復帰や挑戦の機会を両立させたい。厚生労働省は、母性健康管理や休業などの仕組みを案内している。平等とは、全員に同じ負荷をかけることではない。必要な支えを整え、能力を発揮する機会を確保することだ。

②家族の形:誰と暮らすかで、役割は変わる

両親や祖父母、保育士、地域の支援者が家と保育施設をつないで子育てを支えるイラスト

次に家族の形だ。祖父母や親戚が近くにいれば、急な迎えや食事の準備を頼める場合がある。反対に、親類と離れて暮らす家庭では、子どもが一人熱を出すだけで、仕事と生活の予定が一斉に崩れることもある。誰と暮らし、誰に頼れるかは、働き続ける条件に関わっている。

ただし、「大家族なら楽、核家族なら苦しい」とは言い切れない。同居によって介護や家事が増える場合もあるし、人数が多くても特定の女性に負担が集中することはある。昔の家族を一律に理想化するのは早計だ。大切なのは家族の人数だけでなく、実際に使える支えと、負担を分けるルールである。

そして、夫婦だけの家庭だからといって、負担が必ず母親に集まるわけでもない。父親の勤務時間、保育サービス、地域のつながり、家事を外に頼める費用などによって状況は変わる。ひとり親家庭や、育児と介護が重なる家庭なら、家庭の外からの支えがいっそう重要になる。

家族の形は、選べる生き方の優劣を決めるために見るのではない。「困ったときに代わる人がいるか」「家庭の外にも頼れる先があるか」を確認するために見るのだ。

③仕事のやり方:力か、頭か

女性が昇降装置で荷物を扱い、男性がタブレットで確認する物流現場とオフィスのイラスト

三つ目が、その時代の“仕事のやり方”だ。重い物を人の力で動かす仕事では、平均的な筋力差が一部の作業の分担に影響する。しかし、農業でも工場でも女性は長く働いてきた。「昔は男性だけが生産を支えた」という話ではない。

現在も、物流、建設、介護など、身体を使う大切な仕事は数多い。力仕事の時代が終わったわけではない。ただ、運搬機器や昇降装置、道具の改良によって、人の力に頼る部分を減らせる。性別で入口を閉じる前に、作業そのものを安全にできないかを考えたい。

企画や経理、開発、接客などでも、求められるのは知識や経験、判断、対話などの組み合わせだ。「男性は論理的」「女性は気配りが得意」と別の決めつけに置き換えても意味がない。必要な技能を明らかにし、一人ひとりを見て配置し、育てることが出発点になる。

だが、腕力の比重が小さくなれば自動的に平等になるわけでもない。夜の会議に出られる人、急な出張に応じられる人、いつでも連絡がつく人ほど高く評価されるなら、家庭のケアを担う人には不利な条件が残る。問うべきは、仕事の種類に加えて、時間の使い方と評価の仕組みだ。

まとめ:差を広げる条件は、変えられる

体・家族・仕事を表す三つの部品を男女が組み合わせ、町へ続く橋を作るイラスト

ここまでの3つは、別々に働くわけではない。出産後に休息が必要になる。家庭ではその人が育児の担当になりやすい。職場では長く働ける人ほど有利になる。この連鎖によって、一時期の身体的な負担が、長期の収入や昇進の差につながることがある。

例えば、夫婦のうち収入の低い方が時短勤務を選ぶとする。家計として合理的に見える選択でも、その人の経験や昇進の機会が減れば、収入差がさらに広がり、次の家事分担も固定されやすくなる。本人の希望に見える選択にも、前の段階の条件が入り込んでいるのだ。

だから、「差の大半は後付け」と割合まで断定するより、どの条件が差を広げているのかを具体的に見る方が役に立つ。体への配慮、ケアの分担、働き方の改善。変化を起こす場所は一つではない。

“ワンオペ”を生むのは、家族の小ささだけではない

父母が家事と送迎の担当を相談し、父親が保育園バッグを準備する家庭のイラスト

家族の形の話を、もう少し続ける。「昔の母親は文句も言わず子育てした」と言われても、それは今の家庭を助ける答えにはならない。昔にも孤立や厳しい負担はあったし、今にも支え合う家庭はある。時代を比べて我慢を求めるより、目の前の負担を見よう。

総務省の2021年「社会生活基本調査」では、6歳未満の子どもを持つ「夫婦と子供の世帯」の家事関連時間は、週全体の1日平均で夫1時間54分、妻7時間28分だった。家事関連には家事、介護・看護、育児、買い物が含まれる。共働き世帯だけの数値ではなく、調査年は2021年である。それでも、家庭内の負担の偏りを考える手がかりになる。

見落としやすいのが、作業の前後にある段取りだ。夕食を作るだけでなく献立と在庫を考える。保育園に送るだけでなく着替えや提出物をそろえる。予防接種や行事の日程を覚えておく。指示を待って作業する人と、いつも全体を管理する人では、背負う責任が違う。

分担は「言われたら手伝う」から、一つの仕事を準備・実行・後片付けまで担当する形へ変えてみる。送迎なら連絡や荷物の確認まで、洗濯なら洗剤の補充や収納まで含める。これは家庭ごとに試せる工夫だ。ただし、長時間労働や費用の問題を、家庭内の話し合いだけで解決できると思ってはいけない。

ワンオペは、核家族化だけで説明できるものでも、親の根性で片づくものでもない。家族の分担と、保育・地域の支援と、職場の都合が重なって生まれる。必要なのは、一人の頑張りを増やすことではなく、その人に集中した責任を分けることだ。

産業の変化を、追い風に変えるには

男女の同僚がオンライン会議と共有資料で仕事を引き継ぎ、育児と仕事を両立するイラスト

技術や産業の変化は、選択肢を広げる追い風になる。在宅勤務が使える仕事なら通勤負担を減らせるし、業務を共有できれば、誰か一人が常に職場にいる必要も小さくできる。ただし、画面の前で働きながら乳幼児の世話まで一人で担うことを、両立の完成形にしてはいけない。在宅勤務も、保育や家事の分担の代わりにはならない。

経済学者クラウディア・ゴールディンの研究は、長時間労働や急な対応に大きな報酬がつく仕事と、家庭のケアを担う必要との組み合わせに光を当てている。主に米国の歴史や労働市場を扱った研究だが、「時間の融通が利く働き方を選ぶと不利になる」という視点は、日本の職場を考えるうえでも参考になる。

例えば、夕方以降に重要な会議を入れない。顧客情報と進捗を共有し、担当者が休んでも仕事を引き継げるようにする。短時間勤務でも成果と役割を明確にし、滞在時間だけで評価しない。こうした設計なら、育児だけでなく介護や通院のある人にも役立つ。これは本記事からの実践の提案だ。

会社員の私たちにも、始められることはある。自分が休むと止まる仕事を書き出す。会議の時間と必要な参加者を見直す。家庭では「何をやるか」に加えて「誰が覚え、誰が判断するか」まで話す。制度と意識の両方を、日々の仕事の形に落とし込んでいく。

3つを並べて見えてくるのは、こうだ。体の違いだけから、今ある収入や地位の差が必然的に決まるわけではない。家族の支え方と仕事の設計は変えられる。ラスボスの足元には、手を入れられる部品があるのだ。次回は、その差を頭の中で支え続ける“価値観”の要素──思想、宗教、そして意外な伏兵「モテ」を取り上げる。

参考資料

本文中の統計は調査年と対象を示して引用した。家庭や職場の具体例と改善案は、資料を踏まえた本記事の考察である。

総務省:2021年社会生活基本調査・結果の概要(家事関連時間)

厚生労働省:働く女性の健康支援・母性健康管理

ノーベル賞公式:ゴールディン本人が語る仕事の柔軟性とケア

前回の記事

第10回 人類は最初から男社会だったのか

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