パソコンの買い替えを検討し続けた結果、やっと納得のいく逸品を購入した。性能・価格を考慮した際に、これは買いだというパソコンが見つかったのだ。
グラフィックボードを搭載したゲーミングノートパソコン・内蔵GPUが優秀な高性能Ryzen CPUを搭載したミニパソコン等、様々な機種を検討してはやめてを繰り返してきた。
性能は申し分ないけど高額すぎる機種・非常にコスパは良いが長く使うことを考えるとスペックが少し足りない機種。「ちょうど良い」パソコンを探すのは難しいことだった。
けれども、今回のAmazonブラックフライデーセールにて、ポイント還元を考慮すれば非常に安価で高性能なパソコンが手に入った。
MINISFORUM社がリリースしているミニPC「UM870 Slim」である。
中国市場限定販売のAMD製ハイスペックCPU「Ryzen 7 8745H」を搭載し、内蔵GPUは「Radeon 780M」となるため、重々なゲーム以外は難なくこなせる高性能ミニPCだ。
この記事では、購入の決め手や実際に使用した結果をレビューするので、パソコン選びに迷っている人の参考になれば幸い。(本レビューは案件ではなく自腹購入での検証となる)
過去の検討記事も下記にリンクを載せておくので、気になる人は併せて見てほしい。
MINISFORUM(KODLIX) UM870 Slim とは
ミニPC市場を盛り上げた先駆者的メーカーのMINISFORUM社からリリースされているハイスペックミニPCである。
CPUは 8コア/16スレッド、最大コア周波数は4.9GhzのAMD Ryzen 7 8745Hを搭載。GPUはAMD Radeon 780Mで、内蔵GPUであるのにGTX 1650相当の処理性能を持つ。
メモリは高速規格のDDR5-5600が16GB×2枚で32GB。内蔵GPUで多少使うとしても余裕の容量。
ストレージも高速なM.2 PCIe 4.0 SSDが1TB 。さらに1スロット空きがあるので拡張性も十二分。
スペックだけを見たら10万オーバーは当たり前のパソコンである。それが今回のAmazonブラックフライデーでは7万円台。ポイント還元を考慮すると、実質6万円台で購入が出来てしまった。こんなに安いのには裏があるのでは?と疑いたくもなるが、CPUの「Ryzen 7 8745H」が中国市場向けのモデルで、AI処理を行うNPU・AMD Ryzen AI非搭載モデルだから故にコストを抑えているのだろう。
NPUに関しては、AI処理がゴッリゴリに必要な人以外は、現時点では不要と考えて良いものなので(今時点で専用処理を必要とするサービスが大衆化していない)、逆に機能をそぎ落として安価に提供してくれる方がミニPCとしてのコスパが上がる。
今回私は即日出荷が可能だったMINISFORUM社のサブブランド「KODLIX」名義の「UM870 Slim」を購入した。
「MINISFORUM」名義と「KODLIX」名義で見た目・中身は何も変わらない。単純に販路が違うだけだ。それなのにサブブランドだからなのか、MINISFORUM名義よりも数千円安い。名前が違うことで不安を感じている人がいるならば、安心してもらって良い。その時の価格や出荷予定日で都合良い方を選ぶのが賢い買い方だろう。
実施に今回のセールでの購入金額は73,584円。そこにAmazonポイント還元が1,965ポイント。更にAmazonとdポイント連携で10%dポイント還元(上限5,000ポイント)なので、実質66,619円。高性能CPU・メモリ32GB・1TBストレージでこの値段は安すぎる。
そんなコスパに超優れたミニPCであるため、ブラックフライデー先行セール時点で購入をした。
日常用途での使用感
スペックやベンチマークスコア等が気になる人もいると思うが、まずは純粋に私自身がパソコンに求めることが、ちゃんと処理できたかをまとめる。
日常使いとしてのブラウジング・動画視聴
まったくストレスなくサクサク動作する。極端な検証として、Chromeで200個近いブックマークを一気に開いてみたりしたが、重たくなることもなければカクツクこともなかった。ただ、Chromeはタブを大量に開き続けるとメモリ消費がすごいので、200個程で21GB(70%)を消費していたのは事実。それでも全然快適だったので、スペックの暴力って素晴らしいと感じた。もしメモリが16GBだったら動作は怪しかったかもと思うと、「UM870 Slim」の32GBは安心して無茶出来るスペックと言える。
動画視聴もストレス無く「読み込み&再生」が繰り返されるので、この程度の軽い処理であれば難なくこなせることが確認出来た。
Microsoft Office関係ソフト
Office 2021をインストールし、Word・Excel・PowerPoint を動かす限り、常にサクサク・ノンストレスで操作できた。VBAでのもりもり処理Excelを動作させてもみたが、何事もなく一瞬で処理された。会社支給の intel i5 1250P のノートパソコンでは多少カクツキや待ちが出る処理も、「UM870 Slim」であれば一瞬。
動画編集・書き出し処理
Microsoftがリリースしている無料で利用できる(有償契約で拡張有り)動画編集ツール 「Clipchamp」を使って、動画編集処理と38秒の動画を高解像度 (1080p)で書き出してみた。編集中(テンプレート映像を複数つなぎ合わせて一つの動画にする程度)に重くなったりフリーズすることもなく、快適に操作ができた。
書き出しに関しては、38秒(94MB)の動画を高解像度 (1080p)でエクスポート処理を行ったところ、4秒程で完了した。これは想定していたよりも早かった。早すぎる。
動画の書き出しに関して、速度に続いて驚いたのが「負荷が高まるはずなのにファンの音は全然静かで、本当に書き出しが動いているのか疑うレベル」であったことだ。「UM870 Slim」はとにかく静か。何なら部屋の空気清浄機の方がうるさいくらい。
AMDの 「Ryzen 7 8745H」・「Radeon 780M」は優秀。
PCゲーム
主に行う3つのゲームのFPSがどんなものかを確認してみた。Minecraft JAVA版・APEX・モンスターハンターワールドをプレイしてみた時のFPSの値を比べてみた。
AMD Game Performance Monitoringというゲーマー向けのパフォーマンス調整ソフトにて、各ゲーム1時間程遊んだ履歴を確認した結果が下記。画質設定は「低」で行っている。
私自身がこのソフトの調整を学びながらやっているので、正しく動かせているかわからないが、それでも平均FPSは60近くを下回らない結果を維持している。Minecraftに関しては、FPSを60以上にする制限を解除していなかったので、この結果になった。実際に調整して遊んでみた結果は100を超える値だった。以降で各ゲームの画面スクショを載せる。
APEX
右上にFPSの値がある。常時90以上は維持しているため、非常に滑らかにサクサクな動作が可能。ラグがあってはならないFPSゲームも難なく遊べることが分かった。
Minecraft
左上の赤枠で囲ったところがFPSの値になる。131という良い結果が表示されている。AMD Game Performance Monitoringの設定を正しく行えば、ヌルヌルプレイが可能であった。
モンスターハンター ワールド
右上にFPSの値がある。AMD Game Performance Monitoringでゲーミング設定を調整に少し手こずったが、FPS 80 以上が維持され、こちらもヌルヌル快適な状態だった。
といった具合で、日常でパソコンを使用する用途において、何一つ不自由を感じることはなかった。むしろ従来のワークステーションノートPCと比べて、動作だけでなくファンの音、排熱も少ないので非常に快適なパソコン環境を手に入れることが出来た。
ゲームに関するレビューを別途記事化しているので、気になる人は併せて下記も読んでもらいたい。
UM870 Slim の外観
ここまでの説明で私のような日常使いの人間(ゲームは比較的軽めなものをやる程度)にとって、UM870 Slimが快適な環境をもたらすことを理解してもらえたかと思う。そのため、ここからはUM870 Slimがどれだけコンパクトか、見た目がエレガントかを説明する。
私のUM870 Slim利用デスク環境
イメージ中央のモニター下に設置されたシルバーの箱が「UM870 Slim」である。左端に写る「Amazon Echo Show」と変わらないレベルだ。このサイズ感であれば、デスク周りに余裕が出来る。ミニPC故にキーボードも外付けなので、使わない時に収納すればかなりのスペースが確保できる。「持ち運ぶことが絶対に無い」という人はVESAマウントでモニター背面に取り付けてしまえば、更にコンパクトなPC環境の構築も可能。
※モニター下のケーブルがごちゃごちゃしているのは目をつぶって欲しい。現在どうスッキリさせるか思案中。
ノートパソコンには出来ないスペースの有効活用、デスクトップよりもはるかに小さい筐体がミニPCを使うことの最大の利点である。そして、小さいのに各種ポートが充実しているのが「UM870 Slim」の良い点でもある。
充実した各種インターフェース
表面には USB3.2 タイプAが2口、オーディオジャックを搭載。背面には電源ポート、2.5G LAN、HDMI、USB4、DisplayPort、USB2.0 2口が搭載されている。3画面同時出力が可能なので、高スペックだからこそ行いたいマルチタスクも可能な仕様。
私自身は全面のタイプAポートは、用途によって抜き差しする機器を接続している。ゲームパッドやUSBメモリなど。背面は下記イメージにように常時接続し続ける機器類をまとめた。
左から「電源」・「有線LAN」・HDMI・USB-C4.0には「UGREEN Revodok USB-C ハブ 6 in 1」を接続し、HDMIでの映像出力とハブによる端子拡張を実現・USB2.0には安価なHDDを複数本搭載している「HDD ケース」を接続。
USB-C4.0にハブをかませてしまえば、ポートはかなり拡張出来るので、拡張性もあるミニPCだと感じた。
欲を言うと、USB-C4.0のポートがもう1つ欲しかった。2つあれば電源用とHUBか映像出力用で使い分けることも出来た。ただ、「UM870 Slim」は電源アダプターが120W出力対応でも非常に小さいので、家の中を移動して使う程度であれば、電源も一緒に持ち歩いても苦にならない。下記が実際のサイズ感。本体の半分以下である。
ボディは樹脂だがチープ感は少ない
樹脂素材のボディ(ケース)なので、強度はある程度しか期待できないが、塗装がうまくチープには見えない。アルミや金属筐体と比べるとそれなりだが、故に買いやすい価格帯で販売していると思えば、満足出来る見た目・出来栄えである。
むしろ樹脂だから 670g という軽量化が実現出来ている。
各種部品・性能・ベンチマークの測定結果
CPUID CPU-Z
パソコンの主要パーツのスペックを把握。
CPU:カタログスペック通り Ryzen 7 8745H を搭載し、グラフィックは Radeon 780M である。
メモリはDDR5-5600(2800MHz)を搭載 16GB × 2枚 で32GB搭載。
CrystalDiskInfo & CrystalDiskMark
ストレージの規格確認、データ転送速度テストとして実施。
KINGSTON製の PCIe 4.0 x4 であることがわかる。
上から2つは連続データの読み書き速度。M.2 1TB PCIe 4.0 SSDの規格だけあって、4500オーバーはかなり早い。
下2つのランダムアクセスの結果も十分満足できる値。
CINEBENCH R23
CPU性能のテストとして実施。
シングルコア:1669
マルチコア:16407
という結果。
TOPCPUさんのページでシングルスコアのランキングを確認すると、intelのCore Ultraシリーズと同等の結果。何ならAIパソコンのSnapdragon X Elite にも近しい。
マルチスコアのランキングを確認すると、コスパ最強と言われていた Core i5 13490F と同等レベルの結果である。Ryzen 7 8745H 超優秀。6万円台のパソコンに搭載しているCPUとは思えないほどの処理性能だ。
PassMark &3DMark
グラフィックスボードの3D描画性能テストとして実施。
まずは総合的な能力測定としてPassMarkの3D GRAFICS MARKで測定。
スコアは 7869 という結果。GTX 1650には少し届かないが、GTX 1050は超えるスコアだ。
DirectX 12の性能テストが行える「Steel Nomad Lite」で測定。
スコアは2989、FPSは22.15という結果。
内蔵GPUのRadeon 780Mではこの辺りまでだろうという結果。重たいゲームにはやはり向いていないと思った方が良い。
WebGL Aquarium
Webブラウザ上で3Dや2Dのグラフィックスの処理性能を測定。
30000表示でfps60を維持
日常使いで困ることはほぼないと言って良いだろう。
低価格で余裕のある高スペックミニPCを求める人向け
「UM870 Slim」は普段使いとして、グラフィックボードによる高度な処理性能を求めるゲームをしないが、パソコンで動画編集やマルチタスクを行うようなヘビーユーザーにおすすめしたいミニPCである。
ミニPCはintelのN100を搭載した超低価格でそこそこスペックか、高性能CPU(intel core ultraやRyzen 9やAI対応シリーズ)を搭載して10万円超えの高額機種が最近は目立ってきた。
「UM870 Slim」は低価格ではスペック不足・高額機種では過剰スペックだが、パソコンの使用頻度が高い比較的ヘビーユーザー寄りの人に最適なミニPCである。
高負荷の処理として動画編集、動画を見ながら何かをするなどのマルチタスク、軽いゲームをするような使い方であれば、余裕で処理できるスペックだ。搭載しているCPUの「Ryzen 7 8745H」が非常に高性能で、内蔵GPUの「Radeon 780M」が内蔵であるのに優秀な処理性能を持っているので、全てがちょうど良い。
電源もフルパワーで動かさなければ60W電源でも動作するので、電気代の面でもリーズナブルでちょうど良い。ゲーミングパソコンのような大きな電源を必要とする機種は、高性能であるが故に電気代も掛かる。私も以前まで利用していたノート側ワークステーションの電源アダプターは240Wだった。今回買い替えたことで、パソコンの電気代が三分の一程度になる見込み。それでも処理性能は向上した。
ミニPCのコスパの良さが凄すぎる!!ノートパソコンで同じCPU・メモリ・ストレージの構成であれば15万程してしまう。それが6万円台で購入できたのは嬉しい。私はキーボード・モニターも流用している為、追加に費用は掛かっていないが、買い足したってノートパソコンの半額程度に収まるかもしれない。
「UM870 Slim」はMINISFORUM社がリリースしているミニPCだが、サブブランドの「KODLIX」名義でも販売されているので、価格や納期を比較して購入するのが良い。
私は今回、少し安価で即日出荷が可能だったので、「KODLIX」名義を購入した。届いた商品はMINISFORUM社パッケージの「UM870 Slim」で付属品も変わらないため、何ら問題なかった。
「UM870 Slim」よりも安価でソコソコスペックを求める人は「UM760Slim」
軽いゲームもそんなにしないが、スペック不足に陥りたくない人には、同メーカーの「UM760Slim」をお勧めする。
CPUがRyzen5で6コア/12スレッドだが、最大コア周波数は5.0Ghzとシングル処理は高性能CPUと同等である。
メモリが16GBなのが少し心もとないが、ゲームをそれほどしない人であれば、十二分の性能である。
こちらの機種も「KODLIX」名義が販売されているので、金額と納期を比較して選んでもらいたい。
ミニPC市場は他メーカー製品も魅力的
今回はスペック・価格が私の求めるところにフィットしたので、「UM870 Slim」を購入したが、他メーカーのミニPCも最後まで迷い続けていた。
高性能ミニPCをどんどんリリースしている「GEEKOM」、多種多様なスペックのミニPCをリリースしている「GMKtec」、独特のデザイン・不付加価値を付けたミニPCをリリースしている「AOOSTAR」、同スペックであれば他社よりも安価にリリースしている「Beelink」、激安ミニPCを多数リリースする「BMAX」。
その他にも新興メーカーや私が知らないだけのメーカーが沢山出てきている市場である。
用途によって使い分けるくらいの検証が出来れば、様々な目的でパソコンを購入する人の参考になると思うので、きっかけとタイミングが合えば手に入れてレビューをしていきたい。
それでは、良きミニPC・ミニパソコン生活を!!