ITベンダーとの付き合いは日常業務に直結する重要な要素だ。だが、現場の情シスから見て「もっとこうあって欲しい」と感じることは山ほどある。今回は、実際の経験からITベンダーに対して本音で求めるポイントをまとめた。社内SEや情シス担当がどんなベンダーと長く付き合いたいのか、業界の裏側も交えて率直に書いていく。
業界・顧客の業務理解なくして全方位の取引なし

「どことでも取引したい」と言う割に、肝心の業界や顧客の業務をまったく把握していない営業が多すぎる。
本気で全方位でのビジネスを狙うなら、顧客の業務フロー・現場の実情・属する業界のクセまで最低限は押さえておくべきだ。
単に名刺交換や形式的なヒアリングで済ませていては、社内からの信頼はまず勝ち取れない。
また、顧客社内で複数の窓口(情報系、業務系、経理系など)を設けておかないと、大手との継続的な深い取引には発展しない。ここを押さえていないベンダーは、いずれ競合他社に簡単に取って代わられる。
大手企業の子会社だから営業担当も同じでOKは悪手
大手企業の子会社に対しては、親会社の担当営業や部門がそのまま子会社も兼任するケースが多い。しかし、これが実態と全く噛み合っていない。
親会社の業界や業務を理解しているだけでは、子会社が直面している現場課題や業務フローには全く対応できない。
「親会社の流れで一緒にどうぞ」という形式的な対応だけでは、子会社の現場は何一つ動かない。
むしろ、子会社ごとに異なる業界事情や組織構造、求められるIT投資の方向性まで掘り下げて理解できなければ、最終的に“コスト削減対象”にされるのがオチだ。
本気で付き合いたいなら、子会社特有の事情や現場の声をきちんと拾い上げ、提案・サポートに活かす必要がある。
頻繁な押し売り営業は不要、だが情報提供は歓迎
定期的に新商品のパンフレットや案内を持って押しかけてくる営業は迷惑でしかない。
しかし一方で、「新サービスや業界動向」「なぜこのタイミングでこの製品をリリースしたのか」など、戦略的な話題や情報は常に求めている。
ただ物を売るためだけの“売り込み”は不要。
なぜその製品・サービスが今必要なのか、顧客業界のどの課題を狙っているのか、開発背景も含めて説明できる営業だけが選ばれる。
情報発信の質と量、このバランスが大事。
メールや電話で事務的に済ませようとする営業は信頼されない
「何かあればメールで」「電話一本でどうぞ」と言って、全て事務的に済ませようとする営業が多いが、それでは社内の信頼は得られない。
確かに、用も無いのに定期訪問して顔を見せる“ルート営業”は時代遅れだ。
だが、クレームやトラブルにつながる事態が起きた時は、どんなに面倒でも必ず顔を出して面会する。これにデメリットは一切無い。
こうした場面で顔も出さずにメール・電話だけで片付けようとする姿勢は完全な悪手。
顧客とのリアルな接点を持たない営業に、現場の本音は絶対に伝わらない。
会話が弾むことと、取引の評価はまったく別

取引先と会話が弾んで、仲良く接しているからといって、ビジネス上の評価が高いとは限らない。
こちらは日々、様々なパターンの話題を投げかけて、その反応を見ている。
調子良く何でもリアクションする営業が最善だと思い込んでいる人も多いが、内容によっては“期待外れ”や“不信感”を抱き、逆に評価を落としている場合も少なくない。
シンプルに、わかりやすい反応・本音のフィードバックがある方が、こちらとしてはやりやすい。
逆に、あまりに反応が薄い営業の場合は“未知”が多すぎて判断に困る。
得られる情報が少ないということは、それだけ悪い面も見えてこない=取引上のリスク評価もできない。
取引先の担当者は、こうした視点で日々営業のリアクションや姿勢を見ている。
営業側も「フレンドリーさ」と「評価・信頼の本質」は別物であると、しっかり認識しておくべきだ。
“聞き役”営業がいない、自己完結型が増えた

話が上手いだけの営業、テキパキしているだけの営業、当たり障りない営業──どれも要らない。
現場の悩みや愚痴、誰にも相談できない困りごとを“あるべき論”も踏まえてしっかり聞き取れる営業だけが、生き残る。
ITベンダーの現場は「システム導入=ゴール」ではない。
むしろ、導入後こそ現場の愚痴・要望・課題が山ほど出てくる。
そこに付き合いきれる聞き役営業の存在価値は絶大。
単なる“ご用聞き”やマニュアル営業が増えたことで、現場との距離感はますます広がっている。
女性営業を“消耗品”にする会社は論外

今どきでも、女性営業を“華やかさ担当”や“消耗品”扱いするベンダーが未だに多い。
客先の雰囲気作り要員として起用するやり方は完全に時代遅れ。
優秀な女性営業は、現場目線での提案や共感力に長けている。
会社として“人”を大事にしないベンダーには、こちらも本気の相談や長い付き合いは持ちかけない。
本気で薦めてくれる人・機会が激減した
「100%自信を持って薦めます」「自分も納得して提案しています」と言える営業・担当者が明らかに減っている。
個人として納得しない商品・サービスをノルマのためだけに勧めてくる営業は、顧客からも現場からも支持されない。
本気で薦められる提案、誠意あるコミュニケーションができる担当者との出会いが減ったことこそ、ITベンダー業界の“人材の質”が低下している証拠だ。
まとめ
ITベンダーに求めるものは「単なる商品やサービス」ではない。
業界理解、顧客理解、人材へのリスペクト、現場との対話──これら全てが揃ってこそ、本当に価値ある取引先になる。
上辺だけの営業手法や古い慣習に頼っているベンダーは、どんなに規模が大きくても現場には選ばれない。
IT業界はコンサル営業が求められるというのは十数年前から言われ続けていることだが、期待通りの人材と取引が出来る機会は非常に少ない。短いスパンで変化していくITの領域において、常に最前線であるべき論を語り続けることが出来る人材であれば、とっくに独立して大成しているのかもしれない。
だからこそ、組織の力で取引先に求められる営業というのを、それこそお得意のITを使って実現すれば、それが一番の事例・成功体験・自信を持って紹介・売り込めるものになるのでは?と思う。そうあって欲しい。
業界は違えど組織で働くサラリーマンである以上、日頃の課題や悩みに共通項は多いはず。そんな意識をもって各取引先さんには今後も営業をしてきてもらえたら幸い。
かなり偉そうなこと・どの立場でものを言っているんだ?って感じではあるが、間違ったことは書いていないと思うので、たくさん転がっている情報の中の一つとして、この記事を見たことで記憶に残れば幸い。
当社に来てくれている営業さんに届くことを願う!
それでは、良きサラリーマン生活を!!