「また家電の紹介本か」と思って、ずっと読んでいなかった。
タイトルに「家電」と入っているから、どうせホットクックだのロボット掃除機だのを並べて「これ便利ですよ〜」と紹介するだけの本だろうと決めつけていた。そういう本は読まなくてもだいたい内容が想像できるし、買う買わないはレビューサイトで十分だと思っていたからだ。
しかしこの考えは私の完全に浅はかな思考の間違いだったと気づかされた。
『仕事と人生を変える 勝間家電』は、ガジェット紹介本ではなく、「時間という資源をどう設計するか」という思考法の本だ。
1日24時間という制約の中で戦う
この本の出発点は非常にシンプルだ。誰にとっても1日は24時間しかない。稼ぐ力があっても、地位があっても、この制約だけは覆せない。
では、その24時間をどう使うか。
勝間和代の答えは「テクノロジーに任せられることは徹底的に任せ、自分だけが使える時間を生み出す」というものだ。本書のキャッチコピーにある「1日2時間の自分時間を取り戻せ」という言葉は、単なる煽り文句ではなく、著者が自分の生活で実際に実証してきた結論だ。
2000種類以上の家電・サービスを自腹で試してきたという事実が、この本の説得力を支えている。紹介されているのは「売れているもの」ではなく、「効率を最大化するうえで本当に意味があるもの」だ。その選定基準と理由の語り口に、著者の思考プロセスがにじみ出てくる。
「家電」という言葉に騙されるな
本書で扱われるのは家電だけではない。カバンの中身、視力矯正(レーシック)、洋服のサブスク、トランクルーム、昇降デスク、マイク入力、お金の仕組み化……と、生活のあらゆる層をカバーしている。
なぜここまで範囲が広いのか。それは著者の問いが「何の家電を買うか」ではなく、「生活のどこに摩擦があって、それをどう取り除くか」だからだ。
たとえば視力矯正の話。眼鏡やコンタクトは毎朝つける・外す・管理するというコストが発生し続ける。レーシックはその摩擦を一度で消す。これをコスト計算として語れる人間が書いた本だと気づいた時点で、読み方が変わった。
カバンを軽くすることも同じだ。持ち物が重ければ行動範囲が狭まる。移動が億劫になる。その小さな抵抗が積み重なって、行動の量と質を少しずつ下げていく。勝間の目線は常に「その選択が、未来の自分の時間をどれだけ奪うか・守るか」に向いている。
効率を突き詰めた人の思考回路が読める
本書の最大の価値は、製品情報ではなく「なぜそれを選ぶのか」という論理の開示にある。
普通のガジェット本は「このロボット掃除機はバッテリーが長持ちで、段差も乗り越えられます」という話で終わる。しかし勝間はそこで止まらない。「床にものを置かない生活にすればロボット掃除機の効率が上がる。だから収納の設計も変える」というように、一つの選択が別の選択を最適化していく連鎖として語られる。
この思考の連鎖こそが、本書を単なるハウツー集から一段引き上げているところだ。
読んでいると「自分の生活に何の摩擦があるか」を自然と棚卸しし始める。家事に使っている時間、通勤のストレス、睡眠の質、食事の準備にかかるコスト……。それを「なんとなく面倒だな」と感じるだけで終わらせず、テクノロジーで解決可能な問題として設定し直す視点が養われていく。
「労働の奴隷」にならないためのツール論
本書の中に、こういう趣旨の言葉がある。「どれほど優秀であっても、資本生産性を使えない環境ではいつまでも労働の奴隷だ」。
これは刺さった。
仕事でどれだけ頑張っても、家事に時間を取られ続ければ、消耗するスピードが速くなるだけだ。テクノロジーに投資して家事の時間を削ることは、娯楽への逃避ではなく、自分の知的生産を守るための合理的な判断だ、という文脈で語られている。
サラリーマンにとっては特に響く視点だと思う。会社の中では時間の使い方を自分でコントロールしきれない場面が多い。だからこそ、家での時間の使い方を設計する重要性が増す。仕事終わりの数時間を、料理・掃除・雑務で溶かすのか、自分のために使えるのか。その差は積み重なると大きい。
全部を取り入れる必要はない
念のため言っておくと、本書に書かれていることをすべて実践する必要はないし、現実的でもない。
勝間和代の時間単価と、普通のサラリーマンの時間単価は違う。彼女にとって1万円の投資でも「コスパ良し」の判断になるケースが、自分には当てはまらないこともある。また、親指シフトや一部のサービスは人を選ぶし、iPhoneよりAndroidを推す姿勢は好みの問題もある。レビューを見ると「バカにされてる感じ」と感じた読者もいた。その感覚は理解できる。断定口調が強いので、合わない人には合わないだろう。
それでも、この本には「一部だけ持ち帰る」読み方ができる強みがある。各トピックが独立しているので、興味のある章だけ読んで、すぐ試せる。
まとめ:これは思考プロセスの教科書だ
「家電の紹介本」として読み始めて、「効率を徹底的に追求したときに見えてくる世界の話」として読み終えた。
タイトルに引っ張られてスルーしていた自分が恥ずかしい。こういう本こそ、早めに手を取るべきだった。
テクノロジーは使わなければタダの機械だ。しかし使い方の設計次第で、1日の質は確実に変わる。その設計思想を、2000以上の試行錯誤を経た人物から直接学べる本は、そうそうない。
忙しいサラリーマンこそ読んでほしい一冊だ。時間が足りないと感じているなら、なおさら。
おまけ:読書はブックカバー選びから始まる
読書をする際に必ず必要なお供といえば、「ブックカバー」である。出先で読書をする際、「他人に本の内容を悟られないようにする」ことや、「お気に入りの本を汚さない」ためにはなくてはならないアイテム。
しかし私は上記理由の他に超重要な目的でとあるブックカバーを使い続けている。
手汗で本がしわしわ・ぐちゃぐちゃにならないようにするため
本を購入する際にしてもらう紙のカバーでは手汗を吸収してしわしわに。布製のブックカバーでは手汗がしみこみ、なんか嫌な感じに。
そんな手汗民の読書を解決するのが「アーティミス ブックカバー」である。
軽い! 破れない! 水に強い! ポリエチレンファイバー製。
本体の素材はデュポン社のTYVEK(タイベック)というポリエチレンファイバーで作られており、とても軽い。
しなやかさを持ちながら耐水性があるため水にも強く、非常に丈夫で破れにくいため長持ちする。
また、折るだけで様々なサイズの本に対応が可能。
主な本のサイズにはガイドの線が入っており折りやすくなっている。本にあわせて折っていくだけで、様々なサイズの本にぴたりとフィットするブックカバーになる。
もちろん手汗民だけではなく、数多く・様々な本を読む人には刺さると思うので、まだ使ったことがない人は試してみて欲しい。



